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中華航空機の爆発炎上事故からきょうで1年です。那覇空港の構内には独自の空港消防が待機していますが、大事故につながりかねない航空機事故に関しては周辺の自治体の消防にもただちに連絡する取り決めがあります。しかし去年はその連絡体制が機能しませんでした。この1年、課題は解決されたのでしょうか。

「本来ですと自治体消防にも連絡すべきところを、連絡を失念したということです」

事故当日の夜、明らかになった通報の遅れ。事故発生直後、管制塔はすぐ空港内の消防を出動させました。しかし、近隣の消防署への通報は、空港からではありませんでした」

第一報は事故から3分たった後。たまたま、非番で空港近くの瀬長島をジョギングしていた消防職員からでした。

那覇市中央消防署・儀間善昌署長「滑走路側で飛行機が燃えているように見えると。そして、爆発、墜落かは不明だと。煙はボンボン、炎が見えると」

現場からおよそ3キロ離れた場所からの通報のため、飛行機の位置が分からないまま出動しましたが、なんとか通報から9分で現場に到着しました。

儀間署長「それでも多少は遅れてはいるが、それ以上に遅れた可能性は高いと見ています」

那覇市消防本部には、火災発生現場の住所を入力すれば、情報カメラが自動で現場にズームインし、現状を把握できるシステムがあります。詳しい通報があれば、出動した消防隊により詳しい今の情報を伝えることができます。

消防が通報を受けて録画した事故から6分後の映像。詳しい通報がないため現場にズームインせず、空港のどの位置で火災が起こっているかは大よそでしかわかりません。

二度とあってはならない人命に関わるミス。この1年で、消防と空港側の連携はどう強化されてきたのでしょうか。

那覇空港の防災体制は、国際民間航空機関が定める基準に則った「緊急計画」として定められていて、空港近くの消防や病院の連携が図られています。

那覇空港事務所・鋤田親次長「那覇市消防だけでなく、周辺の消防の役割、医師会の役割、空港ビルの役割等を書いてある」

この緊急計画が機能するには、消防への迅速な通報が大前提です。まず改善されたことは「通報する訓練」でした。

「那覇市空港事務所航空保安防災課です。定期の感明度チェック、感明度いかがでしょうか」『感度良好です』「こちらも良好です」『良好ですね、コールバックします』

空港と消防の間のホットラインの試験通話。これまでは、回線に異常がないかをチェックする程度の意味合いのものでしたが、事故後、訓練としての重要性が見直されました。

鋤田次長「事故後すぐ、市の消防及び県警本部に対しての試験通話を、今まで毎月1回だったのを、毎日実施するということをしております」

毎日実施することで、いざという時どこの誰に連絡をしなければならないかを体で覚え、ミスを防げるというわけです。さらに、通報もれを防ぐため、チェックリストを作成しました。

鋤田次長「通報すべき機関を電話番号などを書いてある。ひとつずつチェックしていくと。確実にやろうと」

通報の優先順位と番号を書いたチェックリストの通りに通報し、通報漏れを防ぐというのです。最終確認は航空保安防災課長が行い、二重のチェック体制になっています。

このほか、空港内に待機している航空保安協会の消防車は「3分以内に消火活動を始める」という努力目標を達成するため、管制塔の指示を受けながら滑走路や誘導路を走って現場到着を早める訓練が、年2回から月8回に増やされました。

こうした訓練を受けた消防・救急車両が、空港内に常時5台待機。防火設備の基準も厳しく、空港内には消火栓や防火水槽が300〜400メートル間隔で設置されています。

久田記者「那覇空港で最大の化学車には、12,500リットルの水を積んでいますが、最高出力で吐き出すと、2分ちょっとでなくなってしまいます。そういった時のために、貯水タンクが何箇所か設置されています」

この120トンの大きな水槽や消火栓が合わせて25個。どこで火災が起こっても水が不足するということはなさそうです。

ただ、5台という限られた台数でできることは、人命救助のために必要な最小限の消火です。さらに踏み込んだ消火・救助活動は、周辺自治体の消防が活動できるよう、煙で視界が悪い中でも、取り残された人を認識できる装置や、通常より耐熱性の高い特殊な耐熱防護服などが配備されています。

事故が起きて初めて気づかされた、訓練不足や連携の不備。いつ起きるか分からない事故への対処は、日ごろからの準備が欠かせません。この1年間で、空港や消防の現場では、あの事故を「苦い経験」として、今に活かす努力が続いています。

どんなシステムを作ってあっても最初の通報ひとつがちぐはぐだと機能しない。やはり訓練しかないという事が徹底されただけでもこの1年は意味があったと言えます。3日間の特集で、さまざまな課題が事故を教訓に改善されつつあることがわかりました。

今や移動手段として飛行機は欠かせないわけで、その事故・災害が身近に起こりうるんだと捉えなおせた意義は大きかったと言えそうです。