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仲井真知事や実行委員長の仲里県議会議長らの要請行動から一週間が過ぎました。当初の記述の復活に向け、柔軟な姿勢を示した政府側ですが、状況はやさしくはないようです。まずはこの一週間の動きを振り返ります。

町村官房長官「沖縄の皆さん方の気持ちを何らかの方法で受け止めて、訂正・修正できないものかと。担当の省庁として、責任を持ってしっかり検討しなさい、ということを渡海大臣には指示をしたところです」

渡海文部科学大臣「(訂正申請は)通常の法律でも真摯に対応しますので、今回もしそういう状況が出てきましたら、真摯に対応したいと思います」

県民大会の開催後、政府内ではにわかに教科書への記述復活を検討する声が大きくなりました。このタイミングを逃がすまいと、仲井真知事や実行委員会側は急きょ、要請行動に出ます。渡海大臣は知事らに対し「知恵を出せば問題に反映できるのでは」と県民の思いに一定の理解を示したものの、「検定制度に政治介入があってはならない」と強調し、明確な回答はしませんでした。

仲井真知事「大臣からきちんとした答えはいただけなかったが、大会への大きな流れ、62年経っても傷が癒えないデリケートな部分を汲み取ろうという姿勢が見えた。解決に向けて、まとめてもらいたい」

このほか、要請団は岸田沖縄担当大臣や衆参両院の議長にも大会決議文を手渡し、記述の復活を求めました。

しかし一方、この要請の後、教科書会社の訂正申請で「記述の復活ができればいい」という意見と「記述復活だけでは検定意見は残るため、県民大会の決議要求、検定意見撤回を最後まで貫くべきだ」と、実行委員の間にも微妙な温度差が広がりました。

仲里利信実行委員長「我々としては、検定意見の撤回をしないと将来また同じことが出てくるわけだから、そこはまた改めて意思統一を図ります。ご安心下さい」

しかし知事は、先週の記者会見で検定意見撤回を求めると述べる一方、教科書の印刷が間近なことをあげ「記述の回復」を優先させるべきとの認識を示しました。

また、自民県連も東京の教科書協会に対し、日本軍強制の記述が削除・修正された出版社5社への記述回復を求め要請しました。

自民県連・外間盛善会長代行「出版5社が足並みをそろえて『日本軍関与』の記述回復について、しっかり対応して頂くようお願いしたいと要請を強く致しました」

県連では「あくまで教科書印刷に間に合わせるためで、検定意見撤回を要求しないというわけではない」としています。

ここからは実近記者と伝えていきます。実近さん、政府は検定意見の撤回ではなく、教科書会社からの訂正の手続きで対応するという手法で納得してほしいというところだったようですが、うまくいかなかったようですね?

実近記者「あくまで検定意見撤回に否定的な政府の反応から、知事や自民党県連は『実をとる』と言いますか、まずは記述の回復を優先するという方向で進んでいます。しかし、検定意見の撤回がないままでの記述回復という道を選んだ場合、再び同じことが繰り返される懸念のほか、回復する記述も控えめな表現になる恐れなど、今後多くの禍根を残すことが予想されます。ですから、自虐史観を改めようという『新しい歴史教科書をつくる会』などは大会のあと、逆に『検定意見は絶対に撤回しないよう』文科省に要請しているんです。

新しい歴史教科書をつくる会・藤岡会長「(県民大会会場は)テニスコート2面くらいの面積だそうで、私は行ったことないので実感はわかりませんが。1平方メートルあたり何人座れるかで計算してみると、とても4万人でも難しい。実数は2万とかその程度ではないかと。数が少ないからどうという問題ではなく、仮にこれが10万、20万であろうと、本来そういうことによって日本の教育行政の根幹が歪めれてはいけない。そのことによって動かされようとしていることが問題だと思う」

撤回がなければ、こういう考え方をしている方々にはまさに思うツボという状況が永遠に続くんですよね。

実近記者「そもそも渡海大臣が何度も繰り返している『政治の介入があってはならない』という言葉ですが、安倍前総理大臣は10年以上前から『自虐的な歴史の捉え方を変えなければならない』と言っていて、さらに、安倍前総理の側近で文科省の政務官も歴任した衆院議員は、去年、シンポジウムで『自虐史観教育に基づいた歴史教科書も官邸チェックで改めさせる』と発言しています。そしてまさにその安倍さんが総理になったとたんに、記述が変わった。そして今度は福田さんになったとたんに、急に記述回復の動きが加速してきた。こうしてみると、今回問題となっている検定意見に全く政治的な介入がなかったとは、考えにくいわけです」

実近記者「教科書検定が、時の政権の意向で揺らぐようなことはあってはならないわけで、検定のあり方は、今後大いに検討されるべきだと思います。そのスタートラインに立つためには、最低限、今回の検定意見の撤回なしには、先にも進めないのではないでしょうか?」

来週には150人から200人という要請団が東京に要請行動に出ます。この問題がどれだけ大きいものかを政府はあらためて受け止めることになると思います。